46あなたの愛が正しいわ~
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【ED②夫と別れて新しい男性と恋をするルート】
11 愛する権利
晴れて離婚が成立した私は、公爵夫人マチルダと祝杯を交わしていた。
「おめでとう、ローザ」
マチルダは自分のことのように喜んでくれている。
「これもマチルダ様や公爵家の皆様のおかげです。本当にありがとうございました」
頭を深く下げた私に、マチルダは「私たちの仲じゃない。もう水臭いわね」と言いながら顔を上げさせる。
「それで、あなたはこれからそうするの?」「そうですね……」
私は、とりあえず公爵家から出て行くこと、実家には戻らずに自分一人で暮らしていこうと思っていることを告げた。
「あなたが? 一人暮らし?」
マチルダは、目を見開いて私を上から下まで見つめる。
「ダメよ。女性の一人暮らしなんて危険よ!」「はい。ですから、マチルダ様にご相談がありまして……」
女の私がどこかに邸宅を買って暮らすには、護衛が必要だとわかっている。
「もしよければ、公爵家から女性騎士を紹介していただけないでしょうか? できる限り、高額な給金を払わせていただきます」「そうね、護衛は絶対に必要ね。うちの騎士団から女性騎士を派遣して……」
「あっ」と小さくつぶやいたマチルダは、急にイタズラっぽい笑みを浮かべる。
「大変だわ、ローザ」「どうされたのですか?」
あわてる私に、マチルダは申し訳なさそうな顔をする。
「女性騎士は派遣できないんだったわ。ほら、アイリスが留学するからその関係で……」「そうなのですね。ご無理を言いました。では、別のところで雇います」
私がそう言うと、今度はマチルダがあわてた。
「ああっえっと、女性騎士はムリだけど、男性騎士で良いのなら派遣できるわ!」「そうなのですか?」「そうそう」「でも、男性に護衛をしてもらうのは……」
元夫の件があるので、怖いと思ってしまう。
「大丈夫よ。とりあえず会ってみて」
マチルダはメイドを呼ぶと、バルドを呼ぶように伝えた。指示を受けたメイドはすぐに部屋から出て行く。
「どうしてバルド様を?」「彼ならあなたにふさわしい護衛を知っているわ」「ああ、そうですね!」
バルドは元騎士団長なので、騎士団員たちにくわしそうだ。
呼ばれて部屋に現れたバルドは、マチルダに礼儀正しく頭を下げたあとに、私に微笑みながら会釈する。
「マチルダ様、お呼びでしょうか?」「バルド。ローザが護衛を探しているの。あなた、だれかを推薦してくれないかしら? ちなみに、女性騎士はダメよ」「女性騎士以外で、ですか?」「そう」
バルドは何かに気がついたように「ああ」とつぶやいた。
マチルダが「新人はどう?」と尋ねる。
「経験不足なので、護衛には向きません」「じゃあ、ベテランでだれかいないの?」
「ベテラン勢は、これからの騎士団を担(にな)っていくので、外に出すわけにはいきません」「あら、困ったわね……」「困りましたね」
私の目の前でそんな会話が繰り広げられ、なんだか申し訳なくなってきた。
「あの、もう護衛の件は……」
『けっこうです』と断る前に、バルドが「私はどうでしょうか?」とマチルダに告げた。
驚く私をよそにマチルダは「あら、いいじゃない!」と嬉しそうだ。
「はい、私は護衛には自信があります」「ローザ、どうかしら?」
マチルダから期待に満ちた瞳を向けられてしまう。
「ど、どうも何も、バルド様が私の護衛なんてありえません!」「バルドが嫌なの?」
マチルダの言葉に、バルドが目に見えてズーンと暗くなった。
「嫌だなんて! 違います、私にはバルド様はもったいないという意味です!」「あら、そっち? 良かったわ。それなら気にしなくていいわよ。公爵家でも、騎士団長を辞めたバルドの扱いに困っていたから。ね、バルド?」
バルドは深くうなずいた。
「元騎士団長の私がいては、今の騎士団長はやりにくいでしょう」
その言葉にマチルダは同意する。
「そうよ! バルドがローザの護衛になったらすべて解決ね!」「ええ!?」
バルドは床に片膝をつくと、私をまっすぐ見つめた。
「ローザ様、誠心誠意お仕えいたします。どうか他に行く当てのない私をもらっていただけませんか?」「そ、そんな言い方は……」
戸惑う私を見たバルドは悲しそうに眉を下げる。
「ダメですか?」「ダメに決まってま……」
断ろうとした私に、マチルダがため息をついた。
「はぁ、ローザがバルドをもらってくれたら、もうバルドの嫁探しをしなくていいから、私の肩の荷が下りるのに……」
そのつぶやきを聞いたとたんに、私は両目を見開いた。
「もらいます! マチルダ様のお役にたてるなら、バルド様をもらいます!」
マチルダはパァと顔を輝かせる。
「本当に? 助かるわぁ、ローザありがとう」「いえ、これでマチルダ様のお役にたてるなら!」
マチルダは「うんうん」と満足そうにうなずいたあと、バルドを見た。
「……あとはあなた次第よ、バルド」「はい。ありがとうございます」
こうして、元公爵家の騎士団長だったバルドは、私専属の護衛になった。
*
その後の私は、小さい邸宅を購入して、若いメイドを雇い、護衛のバルドと一緒に暮らしている。ドレスをデザインする事業の他にも事業を拡げ、女性の地位向上や社会進出にも力を入れた。
最近になって、ファルテール伯爵家がお取り潰しになったことを聞いた。当主のデイヴィスが罪を犯して捕まってから、他の後継ぎが見つからなかったらしい。
同時期に私は、女性の地位を劇的に向上させ、社会に大きな影響を与えたとして、男爵位を授かった。
この国で女性に爵位が与えられたのは初めてのことで、驚いたことに、元ファルテール伯爵領を褒美として与えられた。
男爵として忙しくすごす私の隣には、いつもバルドがいてくれた。
バルド自身も、公爵家を出たことで身動きがとりやすくなり、公爵家騎士団と連携を取りながら、公爵家の敵の炙り出しに成功したそうだ。
「今日はお祝いですね」
バルドと二人でワインをかたむける。その穏やかな時間が、私は大好きだった。
「バルド様、いつもありがとうございます。あなたに何かお礼がしたいのですが……」
そういう私にバルドはいつも優しく微笑みながら『お礼なら、もういただいています』としか返さない。
でも、今日のバルドは違った。
「では、ほしいものがあります」
真剣な黄色い瞳が私を見つめている。
「私は、己の使命をまっとうすることができました。ようやくこの言葉をあなたに伝えることができます」
バルドは私の手をやさしくにぎると、そっと手の甲に口づけをした。
「ローザ、愛しています。どうか私にあなたを愛する権利をください」
その切実な声に、私の心臓は跳ね上がる。
「じょ、冗談は……」「私が、このような悪質な冗談を言う人間だと?」
私は首をふった。
「本気なのですね?」「はい」
「……許可します」
私の言葉を聞いたバルドは輝く笑みを浮かべた。
「ありがとうございます!」「でも、条件があります」「はい、なんでもおっしゃってください」「私にも……」
恥ずかしくてバルドの顔が見れない。
「私にも、あなたを愛する権利をください」
目を見開いたバルドは、「もちろんです」と、少年のように微笑んだ。
【ヤンデレ夫から助けられて新しい恋をするルート】おわり
**ここまで読んでくださり、ありがとうございます!このどちらかのお話が書籍化します。
でも、まだどちらのルートになるか決まっていないんです……どっちになるんでしょうね?汗しかも、書籍にするには文字数が足りないので、だいぶ(4~5万字)は書き足すことに。私は絵師様の描いてくださる、ローザ、デイヴィス、バルドを楽しみにしています(急にどうした)
また何か決まりましたら、ご連絡しようと思っていますので、ご興味がある方はどうぞよろしくお願いします!※次回から【だれともくっつかず、妻が自立するルート】を更新いたします。短いですが、よければあと少しお付き合いください。